奨学生に会いに行こう

2017年6月20日 事務局 沢田誠二

フォンサリはラオス最北部、世界遺産都市ルアンパバーンから陸路2日かかるところです。標高1,200メートルの山岳地、30ほどの少数民が居住、朝夕の雲海をはるか下に見る天空の郷です。

今年3月、4名が訪れました。DEFCの支援地視察と奨学生たちとの面談、新規奨学生を選ぶ試験が目的、一週間以上の旅程でした。道が良くなって道中時間は以前より短くなったようですが、学生たちが学ぶ山奥の高校への道のりは依然大変だったとのことです。

ハッサー高校は県都フォンサリから山道を下って約1時間の谷底、斜面を削った狭いなりの平地に校舎や草ぶき教室、先生の宿舎や自炊小屋が散在しています。運動場に相当する広場はありません。

代表 MTの話です。

「奨学生と面談中、校長が一人の学生を連れてきました。小さい時から足に障がいを持っているのだが、とても勉強に意欲がある。親は貧乏でおおぜいの子どもたちを小学校(5年間)へやるだけで精一杯。まして足が悪いこの子には勉強などしても無駄、せめて家の手伝いをしろと、半ば強制的に学校に行くなと言っている。でもこの学生はどうしてももっと勉強したいということで中学校へ通って来ており、高校へも行かせてやりたい。

校長の話が終るか終わらない時に、同席のSOさんが「諾」とはっきりと返事しました。直ぐに担任の先生の大泣きが聞こえてきました。室に入れずに外からずっと心配して見ていのです。校長もうれし泣き。参会していた皆さんも感涙です。

学生は終始うつむいて私たちの話を聞いていました。もしかしたら、何が起きているのか理解できていなかったのかもしれません。急にやってきた外国人が諦めないといけないと思っていた希望の扉を開いてくれたのです。奨学金に応えてくれたSOさんから「勉強したいのか、学校に行きたいのか?」と問われ「はい」とはっきり返事し、少しだけニコリとしました。障がいを持つからこそ勉強が必要との判断だったと帰りの車中で聞きました」

サムパンサイは雨季には車が入れない難路遠隔地、幹線道路から逸れて谷道尾根道を1時間以上、もみくちゃに揺さぶられ、幾度も頭を四駆の天井へぶつけ辿り着けるところです。電気は数年前に来ましたが、ゲストハウスはありません。ふもとまでの交通は主にバイクの二人三人乗り、そうでなければ片道数時間の歩きです。

高校は集落から少し離れた斜面を下った比較的細長い平地。校庭を挟んで一方に校舎、片方に先生や学生たちの寮や小屋が立ち並び斜面片方は雲海に続いています。少し上の斜面にしつらえた溜池から引いた簡易水道が共同の炊事や水浴び場です。周辺と教室はきれいに整えられていて、先生たちの熱意がうかがえます。

送金を心待ちしている奨学生たちは半日かけて歩いて下りATMで半年ごとの入金を確かめます。奨学金が届いていないことが分かりました。3カ月も前に首都の銀行で振り込みしたのに、です。彼らは失望し重い足取りで自炊小屋に帰ったことでしょう。入っていれば少しは買い物をし何か食べて元気に帰ったでしょう。このことで視察の皆さんは肩身の狭い思いをさせました。それでも学生たちの自己紹介スマホ映像を持ち帰りました。代表の話です。

「スマホの波はここまでも来ており、学生たちは写真を撮られることには慣れています。でもビデオに撮られる、ましてや自分のことを話すとなると初めの体験だったことでしょう。何人かの学生は緊張で途中で言葉に詰まり、撮影後泣き出した学生もいました。

帰路、学生たちの涙は何だったのだろうと話し合いました。緊張が解けた涙だったのか、きちんと話せた自分に対する涙だったのか。一つ言えることは、あの場にいた誰にとっても、人生でかけがえのない時間だったということです。

サムパンサイへの訪問は当初、予定にはありませんでした。交通のアクセスが悪すぎるためです。費用対効果を考えれば、学生たちにふもとの村まで出て来てもらい交通費や宿泊費を払うことが正解だったでしょう。NPO活動にも費用対効果の考えはとても大事ですが、あの場所あの瞬間でしか見られない学生たちの表情がとれ、その時間を一緒に共有することができました。それはとても尊く、美しいものでした」

映像は帰国後代表がDVDに編集し支援者へ届けました。はにかみながらもきちんと挨拶をしている純朴な姿を見て、受け取った支援者は喜んでくださいました(写真)。

奨学金未着の問題は、同行のYMさんが手早く連絡などしてくれ、学生たちの通帳記録を調べました。視察団の訪問した日の前後に振り込まれたことが分かりました。届くのに数カ月掛かっていたのです。かの地は難路の遠隔地、最寄りのATMへ行くのも1日がかり、振込みを得てもお金を引き出せないこともあるところです。

そんなところで行うNPO活動は私たちのところの常識という物差しは使えません。それなりに、あるいは、だからこそやりがいがあると思えます。

感激や励まし、嬉しい出会いもあるからです。

写真、奨学生ノイワンリーの動画表紙写真、背景は学生たちの住む小屋や寮

写真、奨学生ノイワンリーの動画表紙写真、背景は学生たちの住む小屋や寮